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自由の意味を考える

映画「自由な学校」上映会を開催しました。


監督の齋藤千夏さんは、全国で上映会を開催されていいますが、その中でも遠近での上映会は最小規模の定員15名。

もっと多くの方に見て頂きたい気持ちはありますが、閉店後の開催ということもあり、駐車場を含めたお店の設備的にスムーズに運営できる限界かなと判断していました。みなさんの熱量のおかげで、ギュッと詰まった質量ある空間となり、この場所ならではの上映会とすることができました。

 

収益がないと続かないという側面は必ずありますが「伝えたい」という気持ちを共有することに意味を見出すことはできます。快く承諾いただいた齋藤監督、足元の悪い中ご参加いただいた皆さまへ心より感謝申し上げます。

映画はもちちろんですが座談会も大変良かったので、またどこかで上映の機会を作りたいと思います。

 

本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

齋藤さんの希望もあって、映画の終了後に座談会的な時間を設けたのですが、ほとんどの方が残ってくれて、言葉をくれたり感想を書いてくれたり・・・映画の内容に幼少の頃の自分自身を重ねた方も多かったし、実際にこれまで教育分野に関わられてきた方は、トエックとの大きな違いを感じられたのでは。

 

映画の中では、幼稚園・小学校とトエックに通った子どもたちが中学校に入った時に感じる「戸惑いや違和感」に焦点が当てられてゆきます。それは実際にトエックに通っていた齋藤監督自身が体験したことであったはず。

 

中学生になると全く違った世界と関わることになるのだけれど、子どもたちを信じて送り出すことは、大人も一緒に成長してゆくことであり、卒業式という節目を強く太く感じた。僕も社会を形作るひとりとして、「多様性を認める社会」などとよくある表向きの看板を掲げるだけはなく、子どもたちの経験や個性を認め、可能性をできるだけ伸ばそうとする大人でありたい。週に一度ではあるけれど、大学に関わる時間があるからこの気づきを生かせる機会はあると思った。

 

もちろん人によるだろうけど、幼少の頃に海外経験をしている人は、多言語を身につけているだけでなく、総じてコミュニケーション能力や観察能力が優れているように感じるのだけれど、それと同じようにトエックで学んだり関わってきた人は「生き抜く力」こそをしっかりと身につけているように思う。違った教育を受けて違った経験をしてきた人間がある場所で出会うのはごく当たり前のことだから、子どもたちが大きな違和感を持つことなく成長できる社会を作らないといけない。

 

自分の受けてきた義務教育を否定はしないけど、制服や規則、団体行動を課すことで「自ら思考する人」が育つとは言い難い。どちらかといえば「従順」「組織向きの人」を育てることが前提としてある気がする。めぐる、と雑誌民藝の取材で地元のものづくり現場を取材すれば、日本が戦争で多くを失ったことにあらためて気づくのだけれど、トエック代表の伊勢達郎さんの言葉を聞きながら、戦後の日本の成り立ちについて学びなおしておきたいと、自分なりのアプローチの方向性を再度確認できた。(自分はこっちのルートで裏付けとりつつ進みます的な)

 

これは余談だけど、会社員の頃、店舗スタッフとして面接にきた方が適性検査で不採用となることが度々あったことを思い出した。人に対して自分が現場で感じる印象と、適性検査における評価に大きな開きがあった。面接を経て採用をお願いして叶わないケースが続くと「あんな紙切れクソだ」と憤慨していたが、後々もその評価軸について考える機会が何度かあった。


仮にプロジェクトを遂行する会社組織やチームを作る機会があったとしても、優秀かつ近い思考の人ばかりを集めてもうまくいくとは限らない。ただプロジェクト単体のより高い跳躍の確率を高めるとすれば、そういった機会もあっていいと思うけれど、行政や企業が「組織の病気」にかかるように、いわゆるエリートさんの集まりだけが正しいことができるとは限らない。僕の経験ではご縁があって「たまたまそこに居合わせた人」同士の苦労するクリエーションの方が後々の財産として残るような気がしている。(お金残りませんが)そんな価値を分かち合える人と一緒に社会を少しでも良くできたら嬉しいし、自分が手応えを感じられる仕事がそこにある。僕にとっては40代でお店をはじめて神山町の事業に関わったようなことだけど、トエックの子どもたちは同じようなことを幼少のうちから体験しているのではないかな。

 

 

僕は民藝に惹かれて自分のお店をはじめたのだけど、思わぬ方向へと広がってきたなと思うし、民藝という僕の基本は今回「自由の意味を考える」ことの大きな助けとなっていることは間違いない。

 

映画「自由な学校」はトエックの卒業生である斎藤千夏監督だからこそ作れた映画だ。外部の人がいくら取材して張り付いてもこれを超えるものは簡単には作れないと思う。そして地元の人間が地元の核心の部分を並走しつつ愛情を持って伝えていることに強く共感した。取引先以外でこれほど「応援しなければ!」と思う人が(しかも徳島から)現れたことが何よりも嬉しい。   映画を見せていただいた実直な感想は「大人こそ危機感を持って学ばないといけない」ということ、快適なところに居座って成長しようとしない大人が多すぎて、いま社会は正しい方向へと向かっていないと僕は思う。戦後の日本を思考停止しながら生きてきた僕ら大人の努力不足が露呈していることを、子どもたちは身をもって実感している。

この世界は簡単には変わらないけれど、あとに続く人の為に発信し伝えること、この店を続けることが僕の仕事です。

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