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生き抜いた痕跡の向こう。


"過度な演出はせず教育機関らしい展示にしたい"

これは「暮しの中の藍布」を開催するにあたり先ず考えたことです。

大学関係者のスケジュール、規模感、交通アクセスなどを加味するとこの時期のこの会場に決まりました。

正直いえば学内に新しいギャラリーを作っていただけないかな・・・と常々考えてはいて、運営を任せてもらえたら必ずいい仕事します。(早くも脱線しました、、)

 

何を伝えたいか、ということはもちろんお題としてあるけれど、よくあるコンセプト的なことは頭から決めません。それは店づくりと同じで「最初に出たものがそのまま形なるなんてありえない」からです。これは自分が店づくりで体験してきたことです。企画チームでツール類を作りながら抽出される要素が言葉になってゆく方が、実際の展示と離れないものになると考え、これを蒐集した野田良子名誉教授の仕事が再評価されること、藍の家を受け継いでいる有内則子准教授の思いが反映されることに気を配っています。

 

この展示も「図録 藍の家」を作ったメンバーに協力いただいていて、主な展示物の選定と解説・野田良子名誉教授との調整を有内則子准教授、デザインはアドファーレン大東浩司さん、企画協力・構成・進行に、めぐる、代表の小山亜紀さん、編集長の徳原香さんにお願いしています。あと、大学側との調整や経費支払い等は、四国大学 SBARU事業部推進本部 副部長の徳山直人さんが一手に引き受けてくれています。徳山さんがいないとこのチームは全く機能しませんし、数々の無理難題を受け入れてくれています。本当に感謝しかありません。ですから徳山さんの実績としてもこの展示を何としても成功させたい気持ちでいます。

 

で、僕は何をやってるかというと・・・気に入らないところで文句言うだけです。


自分が店を通じて作ってきた関係を投入するのは図録と同じですが、初めて仕事するメンバーでもないので、それぞれが全力出してもらえる環境を作って信じていくだけ。お店をしながら関わるのはそれなりに大変ではありますが、展示へのスケジュール管理をしてもらっていることで、ここぞというときに出力をあげることができます。

 

めぐる、も季刊となってこれから体制も変わってゆくので、この機会に事業の提携先として四国大学をお繋ぎしておきたかったという思惑もあって。利益としての予算(お金)よりは先を見据えた関係構築の機会として捉える方がいいし、その割合が多い方がいい。(正直しんどくなるけど、皆地元民だから食っていけるでしょ)でも自分が地元や藍の世界のためにできることがあるなら、労力はどんどん持ち出してやるべきだと思ってます。もちろん予算は必要だし、あるほどいいけどそれだけじゃなく何かの経験を持ってお返しできる関係は強い。ただ継続するためには、できるだけいい条件で仕事を託したいと思う。

 

 

 


 


先日も書きましたが、今回の展示は徳島県から助成いただいてますが、これまで徳島県が企画してきた藍のイベントとは全く関係がなく違うものです。会場が文化の森なので混同される方もいらっしゃるかもしれませんが、展示されるものは、全て四国大学 藍の家の所蔵品となります。   徳島文化・未来創造支援より80万円の助成をいただいています。 ちなみに「つなぐを考える」は15万円。リンク先のPDFファイルをご確認下さい。





展示物そのものに間違いなく力があるので、見応えがあると思います。


 


 


今回の秘密兵器的な展示什器はアークメタル藪原社長に制作をお願いしています。

本番では8台がずらっと並びます!なかなかカッコよくできました。藪原社長のおかげです。

 

 


この県施設(文化の森)では、これまで県主催で藍染作品をLEDで煌々と照らし「盛る」展示が何度も行われきた。そこで展示された作品を否定はしないけれど、選定基準なく並べられた藍の作品はつくられた背景が見えず、力の入った作品もあれば表面的なものも混在していた。   僕は何より大きな会場で「作り手が勘違いする」ことが嫌だった。個人では借りることが難しい大きな会場で高揚し感覚が麻痺し、何かの片棒を担いでいることに気づかなくなる。少なくとも正しいプロポーザルの過程を踏まずに開催された催事の場に、自分と関わりのある作り手には立って欲しくないと心から思った。


だが真摯にな作り手であれば、徳島の藍を伝えるなら協力する責任はある、と全体のことを考えるだろうし、自分の作品は「自分の子どものようなもの」だから舞台に立つなら寄り添いたいはずだ。そんな心情と地域愛が人質に取られているような催事の仕組みに強烈な怒りを抱いた。この場所に来ればそんな苦い記憶が蘇って苦しくなる。

 


多くの宗教施設がそうであるように光にはデザインと同じか、またはそれ以上に人の潜在意識に訴える性質がある。

ボクシングの世界戦や著名なアーティストのライブを想像してもらってもいい。(最近のバドミントンとか卓球もすごい)そこそこ大きな予算を持って演出すれば、人の気持ちをコントロールするようなことができてしまう。だがラグジュアリーな照明計画も研ぎ澄まされたプロのデザインも「価値の無いものをあるように見せる」インチキ技術でもなければ詐術でもない。ローランドの作品を否定する気はないが、でもあれらは藍ではなくLEDに見える。

あの「藍のけしき」は「善意の搾取」の元に成り立っていて、そうならない為の努力や配慮が県には足りなかった。県職員のいい加減な仕事は県と事業者だけでなく、地元のクリエイター同士、事業者同志のの関係を壊すというひとつの事例だろう。



僕が"過度な演出はせず教育機関らしい展示にしたい"と考えたのは、こんな県の「イベント」における見せ方に嫌悪感を抱いたことも大きい。その演出に「すごいでしょう」「きれいでしょう」と、作り手や徳島の藍を称えるのではなく、企画する職員の内部評価の為の気がした。目立ちたい、評価されたい、そんな自分自身に愛情のベクトルが向いた嫌らしさを感じるのは、プロポーザルの手順について説明を拒む文化未来創造課も、不正支払いが発覚した観光政策課も同じだ。「委員」という名前だけの地位を与え騙すようなやり口は狡猾で、徳島の藍、作り手、アーティスト、クリエイターに至るまで事業を大きく見せようとする「手段」でしかない気がした。


その影響を受ける人間を、どのような存在として見ていたのだろう?


良し悪しなんか分からないからいいでしょう?それが本音ではないだろうか。

個人が責任を負うなら大いに構わないが、責任の所在が曖昧な県職員が税金を使い「見せ方や伝え方」を決めることには賛成できない。土足で上がり込み荒らすだけ荒らしたら異動して我関せず。そのような姿勢の県職員が我々から機会を奪うのではなく、地元の然るべき人に伝える役割を託し、経験を積む機会を重ねることで「地域のプロデューサー」を育てることが重要だと僕は思う。

  


行政や助成金が絡み、作り手に良い条件で楽な仕事を出せば、店に卸条件で出すような仕事は選びにくくなるものだ。

そうやって作り手と店(配り手)は疎遠になってゆくが、これは藍染に限った話じゃない。

最近も観光課の巨額の事業の引き取り手がなく、最終はイベント会社が引き受けているが、おそらく藍の知識もなければ愛情もない。「とにかくやればいい」そんな消化を基本とした事業が平然と続けば、地元の関係を壊し伝統産業をねじ曲げ劣化させてゆく一因となるだろう。県職員はそのような問題意識を一切持ち合わせておらず、不正があっても他人事で自身の保身を第一と考え、問題を解決しようという姿勢はない。何度も言うが事業の検証をしないからこのようなことが続く。

 

来月は高松の「まちのシューレ」さんで開催される「四国展」に協力するのだけれどなかなか商材が集まらない。

どんな場所に自分の作品を出すかということは、最終は作り手が自身が決めることだから、僕は作り手の受け皿になれるような魅力ある店に育て、企画する努力を続けるだけ。自分の活動に共感してくれる人が増えて欲しいけれど、それは厳しく苦しい道を選ぶことでもあるだろうからきっと難しい。堂々と行政を批判するスタンスだから付き合いもしにくいだろう。ただ、自分の納得できるものだけを店に並べたい訳ではなくて、共に歩んでくれる作り手の登場こそを望んでいる。日本民藝館展にチヤレンジしているのもその一環です。選んでるようで選んでない、選べない。自分の主張や表現だけではなく、作り手の生活に対しても責任を持ってお店を経営している。だからここはセレクトショップじゃなく「工藝店」と名乗っています。





アドファーレン大東さんに制作を依頼したポスターは、僕が駄々を捏ねた結果2枚が採用されました。

皆さんはどちらが好みでしょうか?お店にはどちらも貼る予定です。


 




ここで展示の話に戻ると、DM(案内状)制作で徳原さんに図録の寄稿文を基に文章を起こしていただいて、意見を出し合ってみたときに「生き抜いた痕跡」という言葉がしっくりきました。(DMにはその文章を全て入れてもらえるようにお願いしました。)僕らは来場者に対して「人々が生き抜いた痕跡」まではしっかりとナビゲートし、その向こうをどう見るか、どう感じて生かすかは来場者それぞれに委ねられる展示にしたいです。

 

野田良子名誉教授の展示解説も、鞍田さんの基調講演も、人々が生き抜いた痕跡の向こうへと向かう、手がかりになると思います。鞍田さんの基調講演「作るのではなく、生きるーいまなぜ民藝か」のみ事前予約が必要となりますので、お早めにお手続きをお願いします。


鞍田さんにはいつも会ってるような気がしますが、一年振りですね。とても楽しみです。

皆様のご来場をお待ちしております。

 

 

✳︎鞍田崇さんの基調講演は、満席定員となりました。お申し込みありがとうございます。


 



暮しの中の藍布 四国大学「藍の家」所蔵品展

 

四国大学「藍の家」に所蔵されている、全国各地から蒐集した古い藍布。その中から約60点を展示します。

これらの布は江戸時代から戦前のもので、作品ではなく実際に使われていた生活布であり暮しぶりそのものです。

限られた素材や道具を用い工夫を凝らしてつくり、何度も修繕しながら使い続ける。

 

人々が懸命に生き抜いた痕跡を辿り、布が如何に大切であったのかを知ることで、

藍で染めることの意味、本当の豊かさや美しさとは何かを考えたい。 そしてこの古布たちを受け継ぎ、未来へと続く役割を持たせる機会となれば幸いです。


・開催場所

徳島県立21世紀館1F 多目的活動室(徳島県立文化の森 総合公園内/徳島市八万町向寺山)

 

・開催日時

令和5年8月25日(金)~27日(日)10:00~17:00

 

・作品解説 26日(土)13:00~ 四国大学名誉教授 野田良子/事前申込不要

 

・基調講演 27日(日)13:00~ 明治大学准教授 鞍田崇/作るのではなく、生きるーいまなぜ民藝か/事前申込制

     

 定員30名 申し込み締切:8月20日(日)/満席定員となりました。


 

 

・入場無料

・主催・問い合わせ先

 主催:四国大学 学際融合研究所

 電話:088-665-1300(代表)

 

・助成 徳島県 とくしま文化・未来創造支援




✳︎鞍田崇さんの基調講演は、満席定員となりました。お申し込みありがとうございます。



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