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報告書のこと



主な内訳は、徳島県からの補助金額は150.000円と藍染研究会による自己負担金で190.000円(イベントの入場料収入含む)で、全体では約340.000円の予算で開催することができました。それぞれが持つ関係性を持ち寄ることでこの会を開催できたこと心よりお礼申し上げます。

 





本日、完了報告書を徳島県へと提出しました。

 

昨年ほどではありませんが、おそらくはこのような意見を盛り込んだ報告書を書く人は他にいない為、職員の印象に強く残り、しっかりとご確認いただけるものであると考えています。


報告書は事実の確認をするだけでなく、次回へ生かすための反省と同時に継続への熱意を示す数少ないコンタクトの機会だと考えます。私たちに必要なのは、行政相手の目先の損得を気にする振る舞いではなく、間違っていることをきちんと伝えることで、5年後10年後の藍の世界を少しでも良くすることです。大人が行政の動きに無関心であれば、先々ではまた同じ問題が起こり、今の若い世代が同じ問題と対峙することになるでしょう。

 

もちろん意思をもって強く書いていますが、彼らの仕事に対する違和感は、私たちが伝えない限り、社会と本質的に繋がらない人たちが自覚することは難しい。だからこそ自分の信頼できる方を招いています。

僕の周りにいる若い世代の方がそうであるように、少し先の管理職を担う若い県職員には必ず届くと信じています。

 


以下、様式第811号実績報告書の項目3.4.をほぼ原文のままここに記載します。

 


 

 

3 実施事業の成果


講師に明治大学准教授で哲学者の鞍田崇氏と、徳島出身の写真家である田村尚子氏を迎えたトークイベントと、映画「からむしのこえ」の上映会を併せ、福島県奥会津昭和村の取り組み事例を参考に伝統産業・伝統工芸の取り組みに対する課題や展望を共有し、 これからの阿波藍について考える機会とした。

 

今回は藍染研究会会員が10名と、一般からは大学関係者、行政職員、地域おこし協力隊、大学生など10名が参加した。県・市町村の藍に関わる部署からの参加はなかったが、事業の特性や時世を鑑み、事業の情報を無造作に広げていないにも関わらず、徳島大学の大学生2名が参加してくれたこと、県外からの問い合わせがあったこと、次回タイミング合えば美術館や博物館の学芸員も参加したいとのお返事もいただいたことは嬉しい驚きであった。講師の活動領域に情報が届いてゆくことで、回を重ねるごとに活動の実態とその輪郭ができあがってゆく実感がある。藍の勉強会として相応しい講師を選ぶことは、この事業の価値付けと同時に阿波藍のブランディングとしても有効だと感じる。

 

映画を撮り、本を発刊する。今回は他にはない個性ある地域と伝統産業への取り組みの一端を垣間見ることができたが、感銘を受けたのは、鞍田氏と田村氏の昭和村に対する真摯な関わり方であった。お二人は主催者の一人である東尾と長年の親交があり、以前にも四国大学 藍の家にお招きした経緯もあったため信頼できる人物として推薦した。予定が終了した後も最後まで藍の家に残り、参加者と交流してくれた。感謝したい。私たちは「金の切れ目が縁の切れ目」となるような軽薄なデザイナーや怪しげなコンサルを講師として絶対に選ばない。また芸能人を連れ回すようなくだらない売名行為もしない。価値のある活動実態があり徳島の藍に関心を寄せ一緒に歩んでくれる方を選び、徳島へ招きたいと考えている。

 

講師の田村氏の縁で四国放送TVの取材を受けた。どのような媒体を通じその活動実態を伝えてゆくかについては検討する必要があるが、私たちの活動が地元への小さな広がりを生んだと解釈している。ただ取材が決まったのが直前であり参加者へのアナウンスが十分でなかったことは反省点として挙げられる。(この点は事項に記載する)


今回は新型コロナウイルスの感染者が急増する難しいタイミングでの開催となった。直前に撮影クルーが陽性と判定され参加者の欠席も相次ぐなど影響を受けたが、会場が四国大学内の施設であること、主催者側の持つ大学授業や店舗経営のノウハウが活かされることで、催事当日は換気を軸とした基本的な感染症対策が徹底され万全の体制での開催であった。新型コロナウイルスについては感染症法上の扱いも変更されるため、今後は人が集まる機会は作りやすくなるだろう。だからこそ今回の経験は小さな成功体験でありその蓄積は貴重であるとも考えられる。


徳島県藍染研究会の事務局となっている「四国大学 藍の家」は、昨年設立30周年を迎えた。四国大学には藍に対する活動にご理解をいただき、この大学施設を会場として無償に近い形でご提供いただいている。ここに他の地域には無い、藍に対する先人の積み重ねがあるからこそ、私たちの活動が少額の助成金と個人の持ち寄りで成立している。




4 実施事業についての反省点


藍の勉強会「繋ぐを考える」としては3度目の開催となり(徳島県の支援を受けるのは2度目)過去2度の反省点を活かしながらの開催となった。第1回目から解消できていない課題のひとつに動画配信までに時間がかかることが挙げられる。参加者やイベント自体の熱が冷めないうちに動画の公開ができれば、広がり方も変わってきただろう。神山アーカイブレコードには低予算に関わらずこれまでの関係性を重視し仕事を受けていただいている。できることなら相応の対価を支払いたいが、現状の予算では動画の編集作業について作業の優先順位を上げていただくことは難しく、納期の短縮はお願いしにくいという苦しい実情もある。そもそものコンテンツ自体が大衆をターゲットをしたものではないが、広がりという部分においては、結果として知名度のあるゲストを招くことのできた機会を十分に生かしたとはいえず、何らかの手助けが欲しいと感じた。また参加者の方にアーカイブ動画の撮影があること、四国放送TVの取材があることに対するアナウンスが十分ではなかった。大きな問題はなかったとはいえ、安心して参加してもらえる勉強会である為には個人のプライバシーや所属に対する配慮は大きな反省材料である。

 

アーカイブ動画は当日に参加できない方や遠方の方が見ることができるメリットが大きい。感染症の流行が続いているからこそ届けることのできる領域があるはずだ。若手の藍関係者の多くは県外からの移住者であることからも、インターネット上において徳島県内での藍に関する活動に触れられることは、未来の担い手を発掘するには有効な手段であると考えられる。だが一方では「動画として残す事業」は講師にとっても参加者にとっても大きな心の負担となることがわかってきた。この勉強会はアーカイブ動画を残すことを目指してきたが、勉強会を継続するという大前提において動画というツールは必ずしもプラスには働かないとも感じた。これらの反省点は参加者のアンケートや後の講師との意見交換の機会から得られたものであり信憑性が高い。YouTubeの有効性についても専門家を招き話し合う機会が必要だろう。どのような事業であっても重要なことは終了後に検証を重ね次へと繋げることだ。その為には主催者だけでなく講師や参加者を含めた関係者全員と良好な関係を築かなくてはならない。それぞれに対価や手応え、気づきや学びがバランスよく得られる機会であることが理想だ。講師をはじめ協力いただいている関係者に仕事として見合う謝金を用意できないことを心苦しく感じている。


 

本事業についての最大の課題は藍への理解者を増やすために継続することであり、徳島県には是非その支援をお願いしたい。県民文化課はこれまで藍関連の事業に多額の予算を投じ、私たちはその度に協力してきたが、残念ながら何の説明もなくやめてしまった。今回の勉強会にはどなたも参加していただけなかったが、その内容について何の聞き取りもないことからも関心の低さを感じる。藍に関わることを簡単にやめられる立場である県職員に、継続する責任を負う私たちと同じ目的を求めるのは難しい。ただ私たちは県職員の目的が「報告書を書くこと」であっても受け入れるべきで、藍に対する本質的な理解や愛情は求めるべきではないこともわかってきた。ただ職務として藍に関する事業に予算を割いていただけたら、見栄えのある報告書を作ることや担当者や担当部署の実績として評価される資料を作ることにも協力することはできる。ですから藍に関する事業の計画があるとするならば、予算という税金は県職員が県職員の都合で県職員の為に消化するのではなく、私たち事業者が藍を次の世代へと引き継ごうとする姿勢にこそ投入してほしい。これは何度も申し上げていることだが「県職員だけで事業を企画しないこと」を重ねてお願いしたい。税金を使い藍に関わる機会をつくるのだから、これまで藍に関わり続けてきた人、これから藍に関わろうとする未来の当事者にこそ滋養があるべきだ。たとえ事業者と県職員の最終的な目的は違っていたとしても、熱量の向かう方向だけは合わせる仕組みを作り、関係性を育てる企画であることが重要だと考えている。「繋ぐを考える」は、その試金石としても継続させ、県職員をはじめ藍に関わる市町村の担当職員が一人でも多く参加できる機会を作りたい。


徳島県藍染研究会は「阿波藍の振興と灰汁建ての技術継承」、本事業は「藍を愛する人を育てる」ことを、それぞれ明確な目的としており、藍を手段として助成金を得ること、またその消化を目的としておらず、県事業の下請け団体を公然と名乗る某一般社団法人とは違う。(県の事業委託は本来競争性が担保されているべきで、あたかも県から独占的な地位を与えられているかのような印象を受ける)

 

目的と手段の倒錯はあらゆる仕事で起こりうる。そのバランスを失わない唯一の方法は、わたしたち一人一人が、自分の仕事の目的が何だったのかを日々自問することにある。

 

3年前から未来創生文化部部長を含めた話し合いを要請しているが実現しておらず、対話を拒む理由についても変わらず説明はない。今この報告書を読んでいただいているあなた自身が、県の文化行政の現状や在り方について検証すること、徳島県が藍をはじめとする文化に関わろうとする目的とその責任を明確にすることを切に希望している。




 

 

  


開催した8月は外構工事の後にコロナ陽性となり、そのまま連載記事を書きつつ、図録の制作も佳境であった時期でした。九段会館テラスへの大型納品もあった。抱えてている仕事が多く自分が満足できるほどの結果は得られなかったけれど、本当にヘトヘトになるまで走り続けました。

 

孤独だなあと思うこともあります。

でも自分が続けてきた活動に関わっていただける方に、学びや気づきを届けられたら本望です。

鞍田さんの人間力と田村さんのセンス、徳島で積み重ねられた藍の歴史があって成立した機会でした。徳島の藍にとって価値ある会であったと自信を持って言えます。本当にありがとうございました。







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